OLA!(鳶さんにインスピレーションを受けた創作サーカス)に参加しました

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高知県・四万十町在住 地域密着型パフォーマー 松葉川健一です。

先日、瀬戸内サーカスファクトリーの企画する国際創作サーカスフェスティバル「こんぴらだんだん」にて

OLA!という作品の創作とワークインプログレス公演にアーティストとして参加させていただきました。

サーカスファクトリー代表の田中未知子さんが何年も暖めてきた企画ということで

とてもかっこよく、しかも色々な想いが乗った作品になっていたと思います。

アーティストとして参加させてもらった身として、創作と公演がどんな感じだったのか?

なんとなく僕自身で試していた演技手法なんかもだらだらと書いてみたいと思います。

鳶さんにインスピレーションを得て・・・

OLA!は鳶さんにインスピレーションを受けて作られた作品です。

瀬戸内サーカスファクトリーは、香川県で現代サーカスを手がける一般社団法人で、

僕は四万十町に移住する前の愛媛でサラリーマンをしている時代から関わらせてもらっています。

サーカスファクトリーが鳶さんと関わったのは3年前の「YA!」公演からだったと記憶しています。

サーカスファクトリーは日本ではまだメジャーとは言いにくい「空中芸」を他のサーカス芸と同様に

扱えるようになりたいという想いが昔からあったようで、

このときは初めて空中トラスと呼ばれる大きな構造物をフランスから購入し、

それを安全に立ててもらうためにフランスの「リガー」と呼ばれる器具の専門家から鳶さんへと立て方を教える企画を行っていました。

恐らく、その時に関わった鳶さんたちの生き方や仕事の仕方などのインスパイアされ、

今回のOLA!の創作イメージがはじまっていったのだと思います。

実際に鳶さんが立てた舞台

OLA!の舞台は、今回の演出であるファクトリー代表の田中さんのイメージから、実際の鳶さんが作った舞台です。

舞台用語でいうところのイントレ、鉄パイプの足場を組み合わせることで舞台が出来ており、

最初の写真のようにエアリアルティシューをつることが出来るようになっています。

これが生で建っているのを見ると、絶妙にかっこいいです。

さらに、特殊照明家の市川平さんが設置する、動く照明や水銀灯などの力により

まるで影による立体的なアート作品になったり、工場地帯のような表情を見せたり、

かっこいい上に創作サーカスにふさわしい舞台装置へと変貌していました。

衣装も鳶さん風

写真は今回のアーティストの1人、目黒宏次郎さんです。

こうじろうさんと同じく、僕ともう1人のアーティスト吉田亜希さんも

最初ニッカポッカにドライシャツという鳶さん風の格好で出てきます。

今回はワークインプログレス公演ということで、まだまだ進化途中とういうことで内容にはふれませんが、

効果的に鳶さんの衣装が取り入れられた演出でした。

創作初期

創作初期は、舞台を前に様々な実験からはじまりました。

OLA!は可能な限りサーカス然とした道具を使わないで、

鳶さんが関わる高所作業にあるものや、ありそうなもので構成したいと考えられていたため、

テトラやアクロバットのこうじろうさんやエアリアルの亜希さんは舞台をどう使えるか?

僕はさまざまな普段ジャグラーが使わない道具をどう扱えるかを実験したりしました。

ジャグリング用に使われていない道具を投げるのは、正直なかなか難しいのですが

ジャグリングの技術力が必要なのではなく、どうサーカス芸を世界観に紛れ込ませていくかという目的で、

もし、そこから面白い動きが生れれば積極的に利用しよう、というスタンスが創作サーカスであり、

演出の鳶さんへの思いや、全体の雰囲気もシェアしてもらっていて、

僕自身この舞台が一目見てとても好きになっていたので、気負いせずにのびのびと練習できました。

創作中期

ある程度の実験が終わると、それをどう作品に組み込んでいくか、シーンの創作がはじまりました。

僕たちが自由に動いてみた結果を素材として、観客の心に届くシーンにするべく、要素を組み合わせたり混ぜ合わせたりします。

根底の部分には、演出のイメージがあるなかで、アーティスト同士が話し合ったり、

一緒に動いてみたりしながら、シーンや動きの流れなどを作っていきました。

ここの部分がなかなか難産というか、今回の演出さんはアーティストではなく、逆に僕たちアーティストはそこまで演出が得意なタイプでもないようだったので、

ふわっとしたシーンや、一見難解なシーンがたくさんできました。

それでも、どんなシーンにも稽古をした流れと時間が乗ってくれば、見た人に(必ずしも明るくない)何らかの感情をわき起こすものなので、

根底のイメージと流れに沿った、流動性の高いアメーバのような作品ができてきていたと思います。

ただ、この段階では僕含めてアーティストはある程度不安をもっていたと思います。

創作後期

アメーバのような作品ができている段階で本番がある週に突入し、

これまでのメンバーに加えて、演出アドバイザーと舞台監督が加わり仕上げの作業が行われました。

この創作後期で一気に形がはっきりとしてきました。

今回の演出アドバイザーの上ノ空はなびさんは、大道芸人として自身もパフォーマンスを行う演出家だったこともあり

これまで流動していた作品の輪郭を、僕たちアーティストにストレスがないように急ピッチでフィックスしてくれて、

しかもそれが、しっかりと演出の求める抽象度を保ちつつ、演出意図が読み取りやすい形でのフィックスだったので、

現代サーカスが持っている、アート性を損なわずに、アートの文脈をそこまで知らないお客さんにも楽しんでもらえる

素晴らしい作品へと、ひとまずの仕上げがされたように思いました。

さらにーワークインプログレス公演とは

ひとまずの、と言ったのは今回はワークインプログレス公演つまり途中段階を見せる公演だからです。

次回の計画がどのようなものなのかは、まだ明かされていませんが、

ここからさらなる創作が行われて、新たな場所にて公演が行われる前提での公演ということで

今回一度輪郭が形作られたものが、壊されたり、再び流動性の高いものにされたり

新たな要素が加えられたりしながら、再び作品として形作られていく予定です。

このまま僕が参加させてもらえるかは、主催次第ですが、本当に楽しみな作品になりました。

芝居はしないけど、演技はする

そんなとても楽しい、わくわくする、しかも勉強になる経験をさせてもらいましたが、

非常に地味にですが、僕も意識していたことがあったので、少しだけ書いてみます。

OLA!は鳶さんにインスピレーションを受けた作品ということで、

最初は僕たちアーティストが本当の鳶さんであるような雰囲気で舞台がはじまります。

この関係者が「リアル鳶」と呼んでいた状態の演技については、僕は一定の自信がありました。

僕はがっつりとマンツーマンで教えてもらったフランス人アーティストとワークしているときに

「僕も君も演劇の役者さんやパントマイミストではないから、無理して芝居をする必要はないんだ。頑張ってやろうとする人がたまにいるけど、とても見ていられない」

ということを言われたことがあります。

芝居の定義は難しいのですが、セリフがあったり、身振り手振りが具体的だったり、抽象度が低い表現に特化した演技のことを言っていたと思っていまして、

ジャグリングや抽象度の高い演技と違って、訓練したり何度も繰り返しやったりしているわけではない表現は可能な限り使うべきではないとうことで

パフォーマーとして本格的に活動するごとに納得の度合いが深まっていっているのですが、今回もその文脈で

作業前の静止

今回僕はリアル鳶を演じるにあたって、作業者の間の取り方を意識してやっていました。

これは、ちょっと説明が難しいのですが、前の職場(製紙会社)の現場作業を手伝ううちに身についた間の取り方で、

工場に従事する作業者は、作業が熟練すると思い切りの良さがどんどん高まりながら、でも作業直前と直後のふたときほどの静止時間が絶対に維持されます。

今回でいうと、例えば一瞬止まってジッと見た次の瞬間にためらいなく足場に金槌を入れ、ちょっと確認する動作です。

これが、芝居で表現しようとすると、金槌をドンドンと2、3回続けて入れるのが正解だと思いますが、

舞台を作ってくれた鳶さんの作業にも僕が感じていた間の取り方に近いものがありました。

実際に事故が起こり得る作業に従事していると、だいたい前後の静止と思い切りのいい一発という方向になっていくのだと思います。

僕は芝居をしようとするととても下手なので、上記のような間の取り方を起点にして演技をしていました。

実際どうだったのかはわかりませんが、演出アドバイザーからは「重い感じの演技が作品とあっている」という趣旨の言葉をいただきました。

現代サーカスの包容力

現代サーカスやコンテンポラリーダンスのクリエーションに参加する度に、その包容力を感じます。

エンターテイメント性の高いパフォーマンスでは、上記の演技は芝居の方向性に是正されていったと思います。

いろいろな経験や、アーティストの持つくせなどをまるごと包容してして作品に出来る現代サーカスは

本当に面白い分野だといつも思います。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

四万十町在住パフォーマー 大学卒業後製紙会社に勤めていたが、移住を機に地域に根を張るパフォーマーとして生きていくことを決意。 2018年現在地域おこし協力隊として働きながらパフォーマーとして生きていいく道を模索中。 詳しいプロフィールや出演依頼などはメニューから各項目を参照ください。